桑の木と土曜日

子どもの頃、
一日はとても長くて、なかなか夜が来なかった。

中でも、土曜日は特別だった。

私が小学生の頃、土曜日はまだ休みじゃなかった。
半ドン。
午前は授業があって、午後がお休み。

友達と遊ぶのは平日の放課後。
日曜日は家族と過ごす。

だから、土曜日の午後は
特別な時間の使い方をしていた。

午前の授業を終え、家に着くと
身震いするほどの、わくわく感。

昼食を食べたら、すぐに出かける。

植物図鑑を持って、ぶらぶら歩き回り、
植物の名前を調べる。

覚えるわけでもなく、
図鑑に載っている、という事実に満足する。

近くの田んぼ。
きれいな農業用水が流れ込む場所で、しゃがみ込んで、ずっと眺める。

水の流れる音を聴く。
ときどき指を入れて泥に触り、水を濁らせる。
それが、また透明になっていくのを、ただ眺める。

満足したら、またどこかへ行く。

広場へ向かう通り道に、桑の木があった。
手のひらのように枝を広げた桑の木。

そこに登って、
「手のひら」で、昼寝をする。

目が覚めても、
まだ夜は来ない。

広場で、四つ葉のクローバーを探す。

摘んだ四つ葉のクローバー、
あれは、どうしたんだっけ。

その頃は、不思議と
四つ葉のクローバーの場所が、わかった。

今は、きっとわからない。

最近、
そんな子どもの頃のことを、よく思い出す。

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